EtherCAT

EtherCAT技術には、他の工業用イーサネットソリューションにあるようなシステム上の制約はありません。イーサネットのパケットを受信後に中身を調べて各コネクションへのプロセスデータとしてコピーするようなことは行いません。EtherCATはイーサネットフレームをオンザフライで処理します。各スレーブノードでは新規に開発したFMMU (Fieldbus Memory Management Unit)がそのノードでアドレス指定されたデータを読み出すと同時にそのテレグラムは次のデバイスへとフォワードされます。同様に、入力データはテレグラムがノードを通過するときに挿入されます。ノード内のテレグラムの遅延はわずか数ns程度しかありません。

マスター側では、非常に低価格な市販の標準ネットワークインターフェースカード (NIC)やオンボードのイーサネットコントローラを使用できます。これらのインターフェースの共通的な機能であるDMA (direct memory access)経由でPCへデータ送信します。つまり、ネットワークへのアクセスのためにCPUの処理は必要ありません。

プロトコル

EtherCATプロトコルでは、公式に割り当てられたEtherTypeをそのイーサネットフレーム内で使用します。EtherTypeの使用することで、標準イーサネットフレームを再定義しなくてもイーサネットフレーム内の制御データを直接送信することができます。フレーム内に複数のサブテレグラムを含めることも可能であり、それぞれが4ギガバイトまでのアドレス空間を持つ論理プロセスイメージ内の特定の領域のデータ送受信に使用されます。EtherCATスレーブノードのアドレス指定はどのような順番でも構いません。データの並びはノードの物理的な接続順とは無関係だからです。ブロードキャスト、マルチキャストやスレーブ間通信も可能です。

イーサネットフレームの直接送信はEtherCATコンポーネントがマスターコントローラと同じサブネット内で動作し、制御ソフトがイーサネットコントローラへダイレクトアクセスできる場合に使用されます。

しかしながら、EtherCATアプリケーションにはこのような制御システムの制限はありません。EtherCAT UDPではUDP/IPデータグラム内にEtherCATプロトコルを入れます。これによって、イーサネットプロトコルスタックを持つどのような制御ユニットでもEtherCATシステムへの通信が可能になります。ルータ越しの他のサブネットへの通信のアクセスも可能です。この形態が使用できるかは制御対象のリアルタイム特性とイーサネットプロトコルが実装されているかという点に依存します。EtherCATネットワーク自身の応答時間にはほぼ制約はありません。UDPデータグラムからEtherCATデータグラムの取り出しは最初のステーションで行う必要があります。

パフォーマンス

EtherCATはネットワーク性能の新次元に到達しました。スレーブノード内のFMMUとマスター内のネットワークカードのDMAアクセス機能によって、全てのプロトコル処理はハードウェアによって行われ、プロトコルスタックのランタイム、CPU性能やソフトウェア実装から切り離されています。1000点の分散I/Oの更新時間はわずか30µsです。1つのイーサネットフレームでは1486バイトまでのプロセスデータを交換でき、このサイズのフレームは12000点のデジタルI/Oに相当します。このデータ量の送信には300µsしかかかりません。

100軸のサーボの通信でも100µs程度です。この時間内で全ての軸へ設定値と制御データを送信し、現在の位置情報やステータスを受け取ります。ディストリビュートクロック技術では1µsを大きく下回る誤差の範囲内でこれらの軸の時刻同期が可能となります。 

EtherCAT技術の極めて高いパフォーマンスによって従来のフィールドバスシステムでは実現不可能であった制御対象への適用が可能となります。例えば、イーサネットシステムは速度制御を行うだけでなく、分散配置したドライブの現在値制御も行っています。非常に大きいバンド幅を使うことでステータス情報を各データ項目とともに送信することができます。EtherCATでは最新の産業用PCの卓越した計算性能に対応した通信技術が使用できます。バスシステムが制御対象のボトルネックとなることはありません。ほとんどのローカルI/Oインタフェースよりも高速に分散I/Oへ書き込みすることができます。

PCIに代わるEtherCAT

中核となるPCは、インタフェースカードのためにスロットを追加する必要が無くなり、オンボードのイーサネットポートが使用できるため、より小さくより費用対効果が高くなります。PC部品の小型化が進み、産業用PCのサイズは必要なスロット数によって決まってしまいます。EtherCAT通信ハードのデータ幅とともにファーストイーサネットのバンド幅は新しい方向性を可能します。EtherCATでは従来から産業用PC (IPC)に内蔵していたインタフェースでインテリジェントなインタフェースターミナルへ送信します。分散I/O、モーション軸や制御ユニットは別として、フィールドバスマスターや高速シリアルインタフェース、ゲートウェイや他の通信インタフェースのような複雑なシステムにも対応できます。イーサネットデバイスは、プロトコルの違いによる制限を除けば分散した「ハブターミナル」経由で接続できます。中核となるIPCはより小型化し、費用対効果はより高くなり、周辺装置への全ての通信は1つのイーサネットインタフェースがあれば十分です。

トポロジー

ライン、ツリーまたはスター型:EtherCATはほぼどのようなトポロジーもサポートします。フィールドバスのようなバスまたはライン型もイーサネットで実現できます。システムの配線で特に便利なのは幹線と支線またはスタブの組み合わせです。必要なインタフェースはカプラ上にあるので、追加のスイッチは不要です。もちろん、従来のスイッチベースのイーサネットのスタートポロジーの使用できます。

配線の柔軟性は様々なケーブルの選択でも発揮されます。柔らかく安価な標準イーサネットのパッチケーブルでイーサネット (100BASE-TX)またはE-Bus (LVDS)信号表現の信号を送信できます。プラスチック光ファイバーはより長距離を接続するようなアプリケーションで使用できます。スイッチやメディアコンバーターを使用すれば、光ファイバーと銅線ケーブルが混在するような状況でもイーサネットの全帯域が利用できます。

ファーストイーサネット (100BASE-TX)やE-Busはノード間距離によって選択します。ファーストイーサネットの物理層はデバイス間の距離は100mまでであり、E-Busラインはモジュラーデバイス用です。最大65535台のデバイスを接続できるのでネットワークのサイズはほぼ無制限と考えられます。

ディストリビュートクロック

正確な時刻同期は、広範囲に分散し、同時動作が要求されるようなプロセスの場合に特に重要になります。例えば、複数のサーボ軸が同時に協調動作を実行するような場合が考えられます。時刻同期の最も強力なアプローチは新しいIEEE 1588規格で規定されている方法で各機器に分散した時計を正確に調節することです。完全時刻同期通信と比べて、通信エラーが時刻同期の品質に直結するような場合は分散して調節された時計を使用すれば、通信システム内で発生しうるエラーに起因する遅延に対して許容範囲が大きくなります。

EtherCATではそのデータ交換は「マザー」と「ドーター」の時計に基づきハードウェアで行います。通信経路が物理的にリング構造となることをを使用して各時計は簡単にかつ正確に他の時計とのランタイムオフセットを決定できます。ディストリビュートクロックはこの値を用いて時刻の調整を行います。つまり、非常に高精度なネットワーク全域の時刻基準をわずか1?s以内のジッタで調整することが可能です。

しかしながら、高解像度のディストリビュートクロックは時刻同期のためだけに使用されるわけではなく、データの取得の各所でのタイミングに対して正確な情報を提供するためにも使用できます。例えば、制御において連続的に測定した位置情報から速度を計算するような場合があります。特に非常に短い時間間隔でサンプリングを行うときは、移動計測で一時的に小さなジッタが発生しても速度の計算に大きな影響を与えます。EtherCATでは新規に拡張したデータ型 (タイムスタンプデータ型、オーバーサンプリングデータ型) を導入しています。このデータ型では測定値に対して最小10nsの解像度の局所時刻をリンクします。このため速度計算の計算精度にはもう通信システムのジッタは影響しません。ジッタフリーの通信技術による計測技術よりも時刻情報をリンクすることで高い精度のサンプリングデータが得られます。

ホットコネクト

ホットコネクト機能により「オンザフライ」でネットワークの一部の接続、切り離しまたは再設定が可能となります。多くのアプリケーションでは動作中にI/O設定の変更が要求されます。例としては、センサー付きのツールシステムを変更するようなプロセスセンターや、インテリジェントでフレキシブルな加工品搬送機のような搬送デバイスがあります。EtherCATシステムのプロトコル構造はこれらの設定変更に対応しています。

Safety over EtherCAT

従来、安全機能はオートメーションネットワークとは別のものとして認識され、ハードウェアを介するか、専用の安全バスシステムが使用されていました。Safety over EtherCATは機能安全に関する通信と制御通信が同一のネットワーク上に混在することを可能とします。安全プロトコルはEtherCATのアプリケーション層に基づいています。このプロトコルはIEC 61508で認証され、安全度水準 (SIL=Safety Integrity Level) 3の要件に適合しています。データ長は可変であり、安全I/Oデータや安全ドライブ技術に適したプロトコルになっています。安全データは安全ルーターや安全ゲートウェイを使用しなくても、他のEtherCATデータと同じようにルーティングできます。Safety over EtherCATに対応し完全に認証を受けた製品が既に存在しています。

オープンな技術

EtherCAT技術はイーサネットと完全な互換性があり、かつオープンです。このプロトコルでは他のイーサネットベースのサービスやプロトコルと同じ物理ネットワーク上で、通常、最小限の性能ロスだけで共存できます。ハーブターミナル経由でEtherCATセグメント内に接続可能なイーサネットデバイスの種類には制限はありません。フィールドバスインタフェースのあるデバイスはEtherCATフィールドバスマスターターミナル内に統合できます。各ソケットインタフェースにUDPプロトコルを実装することも可能です。

詳細情報

日本語:EtherCATパンフレット英語:EtherCAT – The Ethernet Fieldbus